ドリップコーヒーを淹れる際にしばしば聞くのが、「初めの数秒間コーヒーを蒸らす」というアドバイスです。
お湯を注ぐとコーヒー粉が膨れ上がる「コーヒードーム」が出来ます。そのプロセスには落ち着きと喜びが同時に感じられる特別な瞬間があるとおもいます。この視覚的な楽しみを提供する一方で、実際の抽出において蒸らしはどの程度重要なのでしょうか?
また、コーヒードームがなかなかできないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
この記事では、コーヒーの蒸らし工程の必要性とその背後にある理由を探求します。
コーヒーの蒸らし工程の概要
【蒸らしの手順】
1. コーヒー粉全体に均一にお湯を注ぐ
2. 粉がドーム状に膨らむのを観察
3. 膨らんだ状態で数十秒間待機
ハンドドリップにおける「蒸らし」は、コーヒーを淹れる初期段階で行います。この時、コーヒー粉全体にわずかなお湯をまんべんなく加えることがポイントです。
お湯を注ぐと粉がモコモコと膨れ上がり、ハンバーグのようにドーム状になることが理想です。ここで使うお湯の量は、コーヒー粉と大体同じか、それより少し多いくらいが適切です。このステップは抽出の準備段階として非常に重要で、過剰にお湯を注ぎすぎないよう注意が必要です。
膨らみが一旦落ち着くまでの数十秒間は、その状態を保持します。これにより、後の抽出過程でコーヒーの味が均一に引き出される土台を築きます。
コーヒー抽出における蒸らしの重要性
【蒸らしの効果】
– 抽出の均一化
– 抽出プロセスの安定化
– 抽出時間の管理
コーヒーを淹れる際に蒸らしを行うと、コーヒー粉に注がれたお湯が粉粒間に小さな空間を作り出し、均等に分散する道を形成します。これにより、お湯が一部に集中して過抽出や未抽出を引き起こすことを防ぎます。
蒸らしを省略してすぐにお湯を注ぐと、不均一な水の流れが生じ、抽出が不安定になることがあります。蒸らしによって粉の膨らみが収まるのを待ち、約30秒後に本格的な抽出を開始するのが一般的です。
また、このプロセスでコーヒー粉の温度が上昇し、予熱効果によってコーヒー成分がお湯に溶けやすくなります。
抽出時間の調整
「蒸らして待つ」ことで抽出時間を意図的に延ばすことが可能です。短すぎる抽出時間では、コーヒーの成分が充分に抽出される前に終わってしまい、結果として味が薄くなる可能性があります。蒸らしを利用して抽出時間を適切に延長することで、コーヒー豆が持つ豊かな風味と味わいを最大限に引き出すことができます。
コーヒードームができない主な原因
コーヒードームができない(お湯をかけてもコーヒー粉が十分に膨らまない)という現象には、いくつかの原因が考えられますが、主にコーヒー豆の鮮度や焙煎の度合いが影響しています。
コーヒー粉が膨らむ際に重要なのは、粉から放出される炭酸ガス(二酸化炭素)です。このガスが少なければ粉の膨らみも不十分になります。焙煎されてから時間が経過しすぎたコーヒー豆では、このガスが逃げやすく、結果的に粉の膨らみが悪くなります。一般的に、豆は常温保存で約1ヶ月を過ぎると、その効果が著しく低下します。
焙煎度についても、深煎りの豆は内部にガスが多く含まれるためよく膨らみますが、浅煎りの豆は、たとえ新鮮であっても膨らみが不十分なことが多いです。これは鮮度に関わるネガティブな要因ではないため、過度に心配する必要はありません。
その他にも、コーヒー粉が膨らまない理由として以下の要因が挙げられます:
– お湯の温度:お湯の温度が低すぎると、膨らみにくくなります。
– 豆の挽き具合:極端に粗挽きにした場合、膨らみにくくなることがあります。
– 包装:炭酸ガスを吸収する特殊な包装が施されている場合、袋内のガスが失われ膨らみが悪くなることがあります。
コーヒー抽出に最適なお湯の温度:約90℃の重要性
コーヒーを淹れる際、90℃前後のお湯を使用することには具体的な理由があります。特に、コーヒーの蒸らし工程でのその効果は重要です。
【蒸らしの利点】
– 抽出の一貫性
– 効率的な抽出促進
– 抽出時間の調整
お湯を均等にコーヒー粉に行き渡らせることで、一部の過抽出や未抽出を防ぎ、全体的な抽出を安定させることができます。さらに、注ぎ方によって、希望の抽出時間を自在に延長できるというメリットも感じられます。
蒸らしがない状態でコーヒーを淹れると、ゆっくりお湯を注いでも2分を超える抽出が難しくなり、味が薄くなりがちです。蒸らしを取り入れることで、抽出時間を長く設定し、コーヒー成分をしっかりと抽出できるようになります。
また、沸騰直後の高温のお湯では、蒸らしを省略しても抽出は可能ですが、その場合苦味や雑味のコントロールが難しくなります。そのため、蒸らしと組み合わせて、やや低めの90℃前後のお湯を使用することで、抽出のコントロールが容易になり、酸味を抑えつつ苦味やコクを適切に引き出すことが可能です。
まとめ
コーヒー抽出において「蒸らし」は、お湯を均等にコーヒー粉に行き渡らせることで抽出の一貫性と効率を向上させ、苦味や雑味のコントロールにも寄与します。90℃前後のお湯を使用する理由は、適切な抽出温度が蒸らしと組み合わさることで、酸味を抑えつつ、コーヒー本来の風味を引き出すことができるためです。これにより、コーヒーの味わいを深く楽しむことが可能になります。